寺山修司さんの評論集『書を捨てよ、町へ出よう』をご存じか。
明けない夜がないように、止まない雨はない。
永遠に続くかと思われた長雨が嘘のように、ここ数日は絶好の日本晴れ。
さぁ父上、自宅に籠っている場合ではないぞ。
書を捨てよ、散歩へ出よう。
ところで、生後10ヶ月の柴犬がなぜ60年近くも前の書を知っているのかって?
さぁ。きっと前世で読んだんでしょ。
ベランダ段差の試練
長雨で足に根が生えたようで、父上は読書に夢中。
分厚い体裁の長編ミステリ小説を貪り読んでいる。
終の棲家にほど近い湘南・鎌倉が舞台であったことを思い出しての30年ぶりの再読だそうだ。
なのは屋上ベランダで日向ぼっこと洒落込みたく、階段から父上を見下ろし品を作ってみる。

初潮を迎えてレディとなったなののお色気とつぶらな瞳に父上イチコロ(死語)。
小説を片手に屋上ベランダへ。
実はなのはベランダに出る段差を越えられない。
いつもは抱きかかえて外に連れ出してくれる父上がなぜか今日は放置プレーを決め込む。
「かわヨい子には旅をさせよ」とか「かわヨい子はイジメたくなる」などと呟いている。
やむを得ぬ。飛躍のとき。
さんざん逡巡した挙句、また1つ壁を乗り越えて大人の階段を上るなのである。

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立ち塞がる猫の試練
小説を読み終えた父上がなのをお散歩に誘う。
願ったり叶ったり。
清々しい空の下を軽やかな気分で歩いていると、我々犬族の永遠のライバル猫が立ち塞がる。
首輪などの出自を示すものを身に着けていないということは野良だろうか。
上品な顔立ちと美しい毛並みからして、近所にお住いのお嬢様かもしれぬ。
いずれにせよ、売られた喧嘩を買わずんば犬の沽券に関わる。
残暑の三連戦以来久々の異種格闘技第4ラウンド、ファイト!

結果は迫りくるクルマに阻まれて勝負お預け。
近所のご老人を送迎に来たデイサービスのバンを通すため、父上がなのを無理やり引きずって道端へ。
興醒めしたらしき猫は悠然と立ち去る。
さて、気を取り直して大好きな海辺へ。
実はなのは波打ち際の岩場を登ることができない。
だがしかし、屋上ベランダの段差を克服した今となれば岩場とて恐るるに足らぬ。
躊躇しつつも駆け上がり、また1つ壁を乗り越えて大人の階段を上るなのである。

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乗りもの酔いの試練
既報の通り、なのはクルマが大の苦手。
走り出して10分もすれば、上から下から様々なものが出力される次第である。
まぁ有り体に言えば、後部座席はオシッコとゲロとヨダレまみれの修羅場と化す。
事態を重く見た両親は考え付く限りの対策を用意。
いざ出発!ってどこへ?
クルマで30分ほどの小高い山上公園へ。
本日は清々しい秋晴れがなのに味方する。
狭苦しく息苦しいはずのクルマの屋根が全開となり、爽やかな風がなのの体を吹き抜ける。
ゆっくりと移ろう景色を箱乗りで眺めていると、クルマの恐怖や揺れも和らぐというもの。

しかし、あと少しで到着というところで力尽きる。
気休めおまじないは効かず、朝食は全てリバース。
母上がペットシーツで見事ダイレクトキャッチ。
漏れなく漏らしたオシッコはおむつがキャッチ。
上下からの出力被害を最小限に留める偉業達成。
東・江の島、西・富士山、南・相模湾、北・丹沢山系。
晴れやかな気分で景色堪能、至福の一刻を過ごす。

帰路は再現ドラマの如き様相を呈する。
山上で堪能したおやつは全てリバース、オシッコは漏れなくおむつにお漏らし。
また1つ壁を乗り越えて大人の階段を上るなの、とは行かずに終わるのであった。
乗りもの酔いを克服する日は果たしていつ…
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