10年近くも前のこと。
愛媛から高知に向かうドライブ中、山奥の僻地(失礼!)で道を尋ねに最寄りの町役場へ。
ん? 匂う。匂うぞ。これはクマのかほり。
四国にクマって生息してたっけ?
しょうもないボケ、どうもすいません。
クマはクマでも熊じゃなくて隈。
いまや世界の巨匠、建築家の隈研吾さん。
匂いは匂いでもケモノ臭ではなくて木のかほり。
しかし確証はありませんので確認します。
訪問記
梼原町総合庁舎のファサードは意味ありげにランダム配置されたスノコに覆われています。もしや・・・

職員のお姉さんにカルスト台地に向かう道を尋ねるついでにもう1つ質問します。

ここってもしかして隈研吾さんの設計ですか?

そうなんですよ! カクカク・シカジカ、木モク・隈グマ・・・
とは言ってませんが、訊かれたお姉さんはとっても嬉しそう。
こうして私は隈さんと梼原町の蜜月関係を初めて知ったのでありんす。
今を時めく巨匠の手になる建築が高知の辺鄙な山奥(失礼!)に存在するとは意外。
きっかけは隈さんが猛烈な批判を浴びて不遇を囲っていた時代、招かれて梼原町を訪問したこと。
近年の彼の快進撃はこの山奥を起点に始まったと言っても過言ではないのだ。
美談やのぅ。
さて、内観は意外と(失礼!)しっかりした造り。


近年の隈建築ったら鉄骨架構に木の板をペタペタ貼り付けただけの「なんちゃって木造」が多くて食傷気味。(個人の感想です)
しかし、ココは地場杉の集成材による柱梁架構が力強く立ち上がってなかなかの迫力。
凹んでいた隈さんを救ってくれた梼原町への恩義から、いつにも増して設計に力が入ったのでしょう。
知らんけど。
と、ここで役場姉さんから朗報が届きます。

すぐそばにも隈先生の建物があるのでよければお立ち寄りください!

とは言ってませんが、教えられた私は意気揚々。
期せずして隈建築を2棟も見学できるのは僥倖としか言いようがない。
クルマで1分、まちの駅「ゆすはら」に到着。

おんなじやん・・・
いや、正面がスノコでなく藁葺きなのが個性的!
中はどうかな?


こちらも地場の杉材ですが、役場に使われた集成材から一転して一本物の丸太で違いを強調。
なかなか軽やかで開放的で素敵です。
天井は意味ありげにランダム配置された木の板に覆われていますがね・・・


こちらは役場と違って、現代建築3種の神器コンクリート・鉄・ガラスもなかなかの存在感を発揮します。
木材のぬくもりと鉄やガラスのシャープさが溶け合ってなかなかにかっこヨい。
隈建築は決して高価でない材料が多用されますが、安っぽさを感じさせない魅せ方がホント上手。
はい、寄り道終わり。
目的のカルスト台地をドライブした後は、高知市でカツオの藁焼きを食しながらアレコレ考えます。
不遇の建築家と過疎に苦しむ山奥の町との出会い。
やがて建築家は再評価され華麗なる復活を遂げる。
彼の名声に伴って無名の町は建築愛好家の聖地に。
長い年月をかけ、1人の建築家がその才能を通じて地域の活性化に貢献することになる幸せの物語。
狙ってなかったからこそ生み出される感動は、大手デベロッパーがスケベ心満載で仕掛ける凡百の「まちおこし」とは雲泥の差。
こうしたハリウッド映画ばりのヒーロー譚も隈さんの世界的な評価の一因なのかもしれません。
だからといって、建築徘徊は今後も手加減することなくビシバシ隈さんを茶化していきますがね。
有名税ってやつです。

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基本情報
梼原町総合庁舎
設計:隈研吾
竣工:2006年
場所:高知県高岡郡梼原町
訪問:2017年5月
まちの駅「ゆすはら」
設計:隈研吾
竣工:2010年
場所:高知県高岡郡梼原町
訪問:2017年5月
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