ことばは生き物、変化していくのが当たり前。
確かにそうかもしれません。
しか~し!
日本語大好きを自認する私、単なる老害と言われようとも気になるものは気になる。
違和感を拭えない、聞くとゾワッと悪寒が走る変な日本語、奇妙な日本語をあげつらい、断罪します。
一本足打法
基本的にテレビを見ない私、経済番組は別です。
アナウンサーと某企業の社長のやり取り。

〇社をTOB※で子会社化する決断に至った理由をお聞かせください

弊社□□事業の一本足打法は簡単ではなく、事業の多角化が必要と判断しました
※ TOB:株式公開買付け。買付け価格や期間などを公表して株主から株式を買い付けること
ナニ言ッテンダコイツ?
この話を聞いた私はどうにも違和感が拭えません。
「一本足打法は王貞治レベルでないと無理やろ。そもそも経済ニュースで草野球の話すんなや」と。
古典的なボケでどうもすいません。
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野球用語の誤用疑惑を払拭
読売巨人軍往年の名選手王貞治さんの現役期間は1959~80年。
現役引退が半世紀近くも前のことですから、華々しい活躍をご存じの御仁はかなりのご年配。
王選手の引退時に小学生だった私の記憶もかな~りアヤフヤなのでWikipediaさんを頼ります。
百聞は一見に如かず。
野球に疎い私でも、バッティングは2本足でどっしり踏ん張った方がタイミングが取りやすく飛距離も伸びるだろうと容易に想像できます。
しかし王選手はお構いなし。
ご覧ください、この美しいバッティングフォーム。
この打法一筋でホームランを量産したのですから桁違いの大選手。
企業経営者が何らかの形で「世界の王」にあやかりたいと考えるのも頷けます。
しゃあない。
社長さんの言いたいことをがんばって推測します。
- □□事業は片手間≒一本足で経営≒打法するほど甘くない
- しっかり本腰入れて≒二本足で立って真剣に取り組む所存
- でも不安なので他事業≒優秀な選手を外部から買い付ける
- そうして1事業≒スターに頼らず多角化≒全員野球を図る
一本足打法を片手間経営と読み替えればなんとなく通じるような気が。
はいインタビューやり直し。

〇社をTOBで子会社化する決断に至った理由をお聞かせください

弊社□□事業の片手間経営は簡単ではなく、事業の多角化が必要と判断しました
う~ん、何か違う・・・
一本足打法は選ばれし人のみが使いこなせる特別な技術なのに対し、片手間経営って誰でもできそうなチャランポランな印象。
餅は餅屋、ビジネスは日経新聞ということで同社アーカイブに良記事を発見。
【一本足打法】
企業経営において強みを持つ特定の事業や製品が売上高・利益のほとんどを稼ぎ出すこと
あらら片手間ではなくて特定事業に専念する経営でしたか。こりゃ失礼。
であれば、野球用語ならストレート一本、全力投球、一球入魂などの方が合っている気が。
- 全国紙記事データベースによると一本足打法の最古ビジネス使用例は1977年
- 1993年の記事に「既に60年代後半には一本足打法と呼ばれていた」との記述
- 単一の事柄に頼ることを一本足と表現する歴史は古く1930年には記事が登場
つまり…どういうことだってばよ?
こういうことだってばよ。
王選手の個性溢れる構えを介して、ビジネス界と野球界が意味の違いを超えて一本足打法ということばを共有することになったということですかね。
なんて素敵な話なんでしょう。
やはり日本語は美しい。
てな訳で今回は私の不明を恥じることとなり、どうもすいません。
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ビジネスとスポーツの相性
さて、一本足打法に限らずスポーツ界のことばがビジネスに転用される事例は多数あります。
いちいち意味は述べませんが、例えば
- 全員野球、キャッチボール(野球)
- One for all, All for one(ラグビー)
- キックオフ(サッカー)
- 壁打ち(テニス)
などなど。
その理由は何となく想像できるところ。
スポーツで重視されがちな精神論、根性論。
加えてチームスポーツでは連帯感、忠誠心。
いずれも日本企業の大好物ばかり。
道理でヤサグレ会社員の私がムズムズむず痒く感じる訳です。
♬背番号1のすごい奴が相手 フラミンゴみたい ひょいと一本足で♬
相手がこんな強者だと尻尾を巻いて逃げるが勝ち。
しかし、愛社精神あふれるジャパニーズ・ビジネスマンは玉砕覚悟で果敢に立ち向かうのでしょうね。
知らんけど。
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