一本足打法 : ビジネスとスポーツ~変な日本語・奇妙な日本語集成⑱

日常生活
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ことばは生き物、変化していくのが当たり前。

確かにそうかもしれません。

しか~し!
日本大好きを自認する私、単なる老害と言われようとも気になるものは気になる。

違和感を拭えない、聞くとゾワッと悪寒が走る変な日本、奇妙な日本をあげつらい、断罪します。

一本足打法

  • 耳にした場面 テレビの経済ニュース
  • 発言した人  某企業の社長
  • 使われる頻度 野球界で死語?
           ビジネス界で普及?

基本的にテレビを見ない私、経済番組は別です。

アナウンサーと某企業の社長のやり取り。

アナウンサー

〇社をTOBで子会社化する決断に至った理由をお聞かせください

社長さん

弊社□□事業の一本足打法は簡単ではなく、事業の多角化が必要と判断しました

※ TOB:株式公開買付け。買付け価格や期間などを公表して株主から株式を買い付けること

ナニ言ッテンダコイツ?

この話を聞いた私はどうにも違和感が拭えません。

一本足打法王貞治レベルでないと無理やろ。そもそも経済ニュースで草野球の話すんなや」と。

古典的なボケでどうもすいません

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野球用語の誤用疑惑を払拭

読売巨人軍往年の名選手王貞治さんの現役期間は195980年

現役引退が半世紀近くも前のことですから、華々しい活躍をご存じの御仁はかなりのご年配。

選手の引退時に小学生だった私の記憶もかな~りアヤフヤなのでWikipediaさんを頼ります。

百聞は一見に如かず。

野球に疎い私でも、バッティングは2本足でどっしり踏ん張った方がタイミングが取りやすく飛距離も伸びるだろうと容易に想像できます。

しかし選手はお構いなし。
ご覧ください、この美しいバッティングフォーム。

この打法一筋でホームランを量産したのですから桁違いの大選手。

企業経営者が何らかの形で「世界の」にあやかりたいと考えるのも頷けます。

しゃあない。
社長さんの言いたいことをがんばって推測します。

  1. □□事業片手間一本足経営打法するほど甘くない
  2. しっかり本腰入れて二本足で立って真剣に取り組む所存
  3. でも不安なので他事業≒優秀な選手を外部から買い付け
  4. そうして1事業≒スターに頼らず多角化≒全員野球を図る

一本足打法片手間経営と読み替えればなんとなく通じるような気が。

はいインタビューやり直し。

アナウンサー

〇社をTOBで子会社化する決断に至った理由をお聞かせください

社長さん

弊社□□事業の片手間経営は簡単ではなく、事業の多角化が必要と判断しました

う~ん、何か違う・・・

一本足打法は選ばれし人のみが使いこなせる特別な技術なのに対し、片手間経営って誰でもできそうなチャランポランな印象。

餅は餅屋、ビジネスは日経新聞ということで同社アーカイブ良記事を発見。

あらら片手間ではなくて特定事業専念する経営でしたか。こりゃ失礼。

であれば、野球用語ならストレート一本全力投球一球入魂などの方が合っている気が。

しかし本記事の踏み込みは甘くないぞ、レイ

  1. 全国紙記事データベースによると一本足打法の最古ビジネス使用例は1977年
  2. 1993年の記事に「既に60年代後半には一本足打法と呼ばれていた」との記述
  3. 単一の事柄に頼ることを一本足と表現する歴史は古く1930年には記事が登場

つまり…どういうことだってばよ?
こういうことだってばよ。

  • ビジネス業界では1930年代から特定事業専念することを一本足と表現
  • 野球界では1960年代から選手の特殊な構えを一本足打法と呼ぶように
  • ビジネス業界では選手の活躍に触発され1970年代一本足打法に変化

選手の個性溢れる構えを介して、ビジネス界野球界意味の違いを超えて一本足打法ということばを共有することになったということですかね。

なんて素敵な話なんでしょう。
やはり日本は美しい。

てな訳で今回は私の不明を恥じることとなり、どうもすいません

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ビジネスとスポーツの相性

さて、一本足打法に限らずスポーツ界のことばがビジネスに転用される事例は多数あります。

いちいち意味は述べませんが、例えば

  • 全員野球キャッチボール(野球)
  • One for all, All for one(ラグビー)
  • キックオフ(サッカー)
  • 壁打ち(テニス)

などなど。

その理由は何となく想像できるところ。

スポーツで重視されがちな精神論根性論
加えてチームスポーツでは連帯感忠誠心

いずれも日本企業の大好物ばかり。

道理でヤサグレ会社員の私がムズムズむず痒く感じる訳です。

背番号1のすごい奴が相手 フラミンゴみたい ひょいと一本足で

相手がこんな強者だと尻尾を巻いて逃げるが勝ち。

しかし、愛社精神あふれるジャパニーズ・ビジネスマンは玉砕覚悟で果敢に立ち向かうのでしょうね。

知らんけど。

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