なんじゃこのカタカナ語炸裂の建物名は。
由布市観光案内所でええやん。
設計者が漢字2文字の坂茂さんだけに、漢字カタカナ計21文字の異様な長さが際立ちます。
ちなみに坂茂はさかしげではありません。
ばんしげるです。フルネーム5文字と潔い。
“建築界のノーベル賞”と言われるプリツカー賞を師匠の磯崎新さんより先に受賞。
(坂さん2014年、磯崎さん2019年)
そんな坂さんが師匠設計の駅舎のすぐ隣に観光案内所を建てちゃいました。
これは敬意なのか挑発なのか。
真意を探るため大分県由布市に向かいます。
大分旅行、由布院観光、集成材、消える建築、クロスヴォールト、木組み、組子細工、師匠と弟子
訪問記
磯崎さんの由布院駅は前記事で紹介済み。
今回は駅舎に寄り添うように建つ由布市ツーリストインフォメーションセンターへ。
名前長いんで、以後は愛称のYUFUiNFO(ゆふいんふぉ)を採用します。
“i“だけ小文字ってのがいかにも木っ端役人が考えそうなスケベ心に溢れます。
ん? どっかで似たものを見たぞ。
同じく坂さん設計の下瀬美術館、愛称SIMOSE。
YUFUiNFO(2018) vs SIMOSE(2023)
木の集成材を束ねて柱とする手法は共通じなれど、YUFUiNFOの4本に対してSIMOSE数えきれず。
僅か5年ほどで随分と育ったものです。
こりゃ将来はますます凄いことになりそう。
柱と屋根が木、壁や床がコンクリート・鉄・ガラスの3大スターとメリハリが効いて素敵。
気分がアガるスロープで2階へ。
スケスケのガラス壁で仕切られて建物内外の区別が付きません。
内 vs 外
展望デッキから師匠設計の駅舎を眺めます。
柱から屋根にかけての曲線美が駅舎のクロスヴォールト屋根と見事にシンクロ。
曲率は全然違いますが柱スパンの関係でやむなし。
しかし安心しました。
これは挑発ではなく敬意です。
いわゆるオマージュ。おまんじゅうちゃうで。
晴れて懸念が解消したので、木造架構を改めてジックリ観察します。
接合部に鉄のプレートはおろか釘さえ見当たらず。
組子細工のような繊細さを感じるディテールからして、もしや伝統工法の木組みでしょうか。
少なくとも4本の柱は穴を開けて鉄筋を挿入、エポキシ樹脂を注入して接着しています。
確かに柱をよく見ると丸い木板が穴を塞いでます。
木のぬくもりと現代技術の融合。素晴らしい。
さて、これまで田んぼに浮く建築や水に浮いて動く建築を実現してきた坂さん。
本建物はさしずめ森に誘い込む建築でしょうか。
連なる木造柱と覆いかぶさる木造屋根が織りなす様はまるで森の中にいるような感覚。
坂さんが次にどんなワクワクする建築を実現してくれるのか、とても楽しみです。
【PR】
紙の建築 行動する―建築家は社会のために何ができるか 坂茂 著(Amazonで購入)



基本情報
由布市ツーリストインフォメーションセンター
設計:坂茂
竣工:2018年
場所:大分県由布市
訪問:2025年8月
【PR】




コメント