「国際教養大学」とはこりゃまた随分と立派なお名前だこと。
秋田市郊外、秋田空港のすぐそばに2004年に開学した公立大学です。
そのキャンパス内に2008年に完成した図書館はよく「日本一美しい」「美しすぎる」などと形容されます。
これは見に行ってみなければなりますまい。
訪問記
毎夏、東北の県を順に巡る旅を続けている私たちポンコツ夫婦、2022年はレンタカーで秋田県を一周。
秋田市郊外の国際教養大学にやって来ました。
京阪神と首都圏でしか暮らしたことのない純都会っ子の私、あまりに開放的なキャンパスに唖然!
敷地境界を主張する塀などは何もなくてどこからキャンパスなんだか分かりません。
たまたま見つけた駐車スペースにレンタカーを停め、徒歩で目当ての図書館に向かいます。
外観は至ってフツー。写真も撮ってません。
ところが中に入ると・・・
おおっ!
これは確かに美しい!
きっと秋田杉に違いありませんね。
徹底的に木材が使われた安らぎの大空間が出現しました。
てにをは日記の熱心な読者の方(いるのか?)なら先刻ご存じの通り、私は無類の本好き。
これはアガります。
ということで階段を上へ上へ。
上から見渡す館内は何やらデジャヴのような感覚。
あぁ、2019年にフランス・リヨンで訪れた円形劇場に似ています。
リヨン vs 秋 田
気になって大学のウェブサイトを覗いてみると、この図書館のコンセプトが記されていました。
- 本のコロセウム
- 本と人との出会いの場となる劇場空間
- 知の闘技場
安らぎとは対極の物騒なことばも混じっていますが、やはり「劇場」つながりね。
上下左右にほどよく間隔のあいた席に座り、ある者は勉学に、またある者は愛読書に没頭。
近すぎず遠すぎずの絶妙な距離感で他者の存在を意識しながら、黙々と自身の知的戦闘力を高める。
なるほど「知の闘技場」とは言い得て妙です。
さて、闘技場の中心に降りてみましょう。
ここから見上げる座席はまるで観客席のよう。
自分が大観衆の注目を一身に集めるヒーローになると想像すると、自然と気持ちが高揚します。
ここでクイズ大会なんぞ開催しようもんなら異様に盛り上がりそう。
巨大な傘を連想させる屋根の構造も注目です。
立派な1本ものの丸太6本を控えめな鉄製プレートで束ねて「柄」を構成しています。
木の角材をトラス状に組んだ25本の「親骨」。
さすがに広げっ放しという訳にはいかず、背割りも豪快な角柱6本で「露先」を支えます。
安らぎと高揚が同居する美しい図書館を四六時中自由に使えるとは、ここの学生さんや近隣の方々は恵まれていますねぇ。
ただしキャンパスの周りは見事に何もなさそうなので、夜中に独りでいると怖い思いをするかもしれません。
妖怪からかさ小僧が出現しても不思議ではない。
さて、設計したのは仙田満さん。
誰や「ナハッ!ナハッ!」とか言うてんのは?
それはせんだみつおや!
この無礼者、今は亡き東京工業大学の名誉教授であられるぞ!・・・って無礼なのは私です。
どーもすみません。
児童向けの公共建築を数多く手掛ける建築家としてもご活躍です。
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基本情報
国際教養大学中嶋記念図書館
設計:仙田満
竣工:2008年
場所:秋田県秋田市
訪問:2022年8月
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