建築徘徊10 紀尾井清堂|内藤廣設計の何も機能を持たない純建築

建築徘徊
この記事は約4分で読めます。

建築主がこの建物の設計を依頼したとき、「使い方は出来てから考えるので、思ったように造ってください」とおっしゃったとのこと。

設計者の内藤廣さんはさぞや困り果てたのか、あるいは闘争心に火が付いたのか、想像するのも楽しい。

何の機能も持たない建築、紀尾井清堂
気になるじゃないですか。見に行ってきました。

訪問記

東京メトロ半蔵門駅から徒歩10分ほど。

東京都千代田区紀尾井町、まごうことなき都心のど真ん中です。

いかにも地価の高そうな場所に「何の機能も持たない建築」があるとはちょっと想像できません。

見えてきた建物はコンクリートの立方体を全面ガラスで覆ったオブジェのような外観。
要所に使われた木がアクセントとして効いています。

交差点の角地にある建物、いつもの通りグルっと一周したいところですが、南面と東面は他の建物に遮られて通ることも見ることもできません。


で、なに、この階段!?
コンクリートとガラスの壁に挟まれて外階段が宙に浮いています。

あそこを昇り降りしてぇ!
永遠のガキんちょの私、思わず口にしてしまいます。
後で建物に入ったら絶対に試したろ。

建物の入口は道路面から少し下がったところにあります。

建物に入ると、彫刻のような異形の太いぶっといコンクリートの柱がお出迎え。

杉板を型枠に使った本実(ほんざね)仕上げになっていてカッコよいです。

この1階、四隅の独立した極太柱だけで建物を支える構造になっています。

柱の間のガラス窓から路上を行き交う人がチラリと見えて秘密基地感が漂います。

見学日は「奇跡の一本松の根」展が開催されていました。
東日本大震災を生き抜いた逞しい生命力が建物の力強さに呼応しています。

それにしても変わった建物ですな。
2階に上がるためには、いったん外に出て別の階段から再度建物に入らねばなりません。

外観とは真逆で木の仕上げが主体となっており、要所に見えるコンクリートや鉄がアクセントになっています。

頭上を見上げるとマッシブなワッフル形状のコンクリート屋根に穿たれたガラス開口から日光が降り注ぎ、静謐な空間に厳粛ささえ漂います。

あまりの美しさに思わずため息が漏れる。

建物の周囲に沿ってグルグルと回廊と階段が取り囲んでおり、訪問者を否が応でも上へ上へと誘います。

もちろん誘いに乗って一番上まで登りましょう。

どこをどう切り取っても美しい写真になります。

階段が大好物の私、手すりの凝りに凝ったディテールに思わず見惚れてしまいます。

最上階の5階から天井を見上げると、豪快なコンクリート屋根の開口から青空と高層ビル。
下を見下ろすと圧巻の吹き抜け空間の底に2階フロア。

何らかの機能を持たせた部屋は潔いくらいに存在していません。

いやあ堪能たんのう、残すは例の外階段

しかし残念ながら、外階段に出る扉は3階も4階も施錠されていました。

お金を払ってもいいから外に出してもらいたい

余りの名残惜しさに階段の下から仰ぎ見ます。
なるほど階段はコンクリート外壁から片持ち、ガラス壁には接していないのね。

久しぶりに建物を見て感動しました。

人の役に立つために作られるべき建築が何の機能も持たない。

この禅問答のようなお題に答える思考力は残念ながら私にはありませぬ。

しかし、コンクリート・鉄・ガラス・木材をそれぞれの特徴を生かして組み合わせた現代アートと捉えれば、難しいことは抜きにして純粋に楽しめる名建築だと感じました。

【PR】

建築の難問 新しい凡庸さのために 内藤廣 著(Amazonで購入)


基本情報

紀尾井清堂
設計:内藤廣
竣工:2020年
場所:東京都千代田区
訪問:2022年9月


【PR】

建築徘徊
スポンサーリンク
Dr. Teniwohaをフォローする

コメント

PAGE TOP