てにをは日記初登場、坂茂さんの建築です。
さかしげさんではありません。
ばんしげるさんです。はいフルネームです。
坂さんが田んぼのド真ん中にホテルを建てちゃいましたので、泊まりに行ってきちゃいました。
訪問記
2019年秋。
山形県を旅行中の私、この日は鶴岡市にやってきました。
見渡す限り田んぼが広がります。
都会生まれ都会(幼少期少しだけ京都南部の片田舎)育ちの私にとっては別世界のようなこの地に宿泊します。
だだっ広い駐車場にクルマを停め、ホテルのエントランスへ。
暗くてよく見えませんが、アプローチのすぐ横はどうやら田んぼ。
うっかり足を踏み外して落っこちたら泥だらけになるでしょう。
ホテルの中も暗くてよく見えませんが、どうやらこの木製階段を上った2階がフロントのようです。
チェックインを済ませてまずは部屋へ。
せっま~い!
セミダブルベッドと洗面、トイレ、以上!
(ちゃんと広い部屋もありますよ、念のため)
部屋にいてもしょうがないのでホテル内を偵察。
フロントやレストラン、ライブラリーなどが集約された共用棟を見て回ります。
そう、ライブラリーつまり図書コーナー。
たくさんの本がインテリアのように展示されていて自由に閲覧することができます。
「晴耕雨読」ってやつですね。
もしや雨の日や夜は本を読んでもいいけど、晴れの日中はホテル回りの田んぼ作業を手伝わねばならんのでしょうか。
内装はとにかく木、木、木。
特に折板構造に間接照明を組み合わせた天井は柔らかくて暖かくて心なごみます。
翌朝。
ホテルの周りを散歩します。
この建物は共用棟を中心に、3方に分散配置された宿泊棟が取り囲む構成。
共用棟と宿泊棟は渡り廊下でつながっています。
その宿泊棟の外観は失礼ながら正直言ってチャッチ~い!
木造プレファブの仮設住宅のようです。
チェックアウトして帰り際、昨夜は暗くてよく見えなかったアプローチを振り返ります。
やっぱりすぐ横は田んぼ。
幸い稲刈りは終わったようで水は張っていませんでしたので、落ちても安心。
さて設計者の坂茂さんについて。
安藤忠雄さんが「闘う建築家」ならば、この方は「動く建築家」。
”建築界のノーベル賞”といわれるプリツカー賞を2014年に受賞されました。
建築家としての評価はもちろんのこと、坂さんの真骨頂はすさまじいまでの行動力。
世界各地の被災地や紛争地で紙の住宅を作るなどの支援活動を行っておられます。
1995年の阪神淡路大震災、2011年の東日本大震災などは言うに及ばず、自らルワンダやウクライナに飛んで紙製の避難シェルターを建設するなど、もはや建築家の域を超えて慈善活動家です。
1つだけ事例を挙げるとすれば、2011年ニュージーランド地震で壊滅的な被害を受けたクライストチャーチの街なかに作り上げた紙の教会。
今も街の人たちに愛される教会として大事に使われているようです。
坂さんのこうした一連の活動を知れば知るほど、田んぼホテルに対する「せっま~い!」とか「チャッチ~い!」なんて批判が単なるイチャモンに思えてきます。
坂さんの足元にも及ばん小者やな、てにをは。
眩しすぎて頂上が見えませんが、この坂を少しでも上まで登るべく精進いたします。
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基本情報
SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE
設計:坂茂
竣工:2018年
場所:山形県鶴岡市
訪問:2019年10月
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