コンクリート・鉄・ガラス。
押しも押されもせぬ現代建築の3大スター。
優れた建築家はこの僅か3種類の素材で個性豊かな建築を生み出すことができます。
世界の巨匠・隈研吾さんのおかげで「消える建築/負ける建築」が人口に膾炙してきた昨今。
建築徘徊でもコレとかコレのような透明感に溢れる建築をいくつかご紹介してきました。
本日は3大スターを使いこなして業界(笑)1、2を争う透け透けを実現した日本建築学会賞受賞作を訪問。
消える建築、負ける建築、透明建築、極細柱、伝統工芸、最新技術、構造技術、匠の技
訪問記
目的の建物は厚木市の神奈川工科大学 KAnagawa Institute of Technology(KAIT)内にあります。
略称にAが付くのは金沢工業大学 Kanazawa Inst. of Tech.(KIT)に先を越されたからかなっ。
キャンパスは平凡な(失礼!)住宅街の中に突如として現れます。
守衛所で見学者用のネームタグを受け取り構内へ。
【注】事前予約がないと入れません。
構内を奥に向かって歩いていくと、噂に違わぬ透け透け建物が漸次として現れます。


透明過ぎて後ろの平凡な(失礼!)校舎が透けて見えとるやん。
校舎の白が保護色となって柱が消失し、全面ガラス張りの建物はクラゲの如くユラユラ希薄な存在感。
夏はきっと陽炎の如くユラユラするんでしょうね。
ほぼほぼ正方形の建物外周をグルッと一周します。


先ほどは背後に透けて見えた平凡な(失礼!)校舎が光の加減で今度はガラスに映り込む。
少し先に進むとまた背後に透けて見えるように。
周景を取り込んで目まぐるしく変化する様は万華鏡の如く美しいけれど、背後はかっこヨい建物であってほしいところ。
透明過ぎて建物内外の区別が付かず、いつの間にやら入館していたことを空調の暖かさに教えられます。


柱、細っ! 薄っ! 位置バラバラ!
潔いほどに骨と皮しかありません。


白塗り鉄と灰色コンクリートのスケルトン(骨格)に透明ガラスのスキン(皮膚)をまとっただけのミニマリズムの境地。
その強烈な美意識に恐れをなしたのか、はたまた自己主張を禁じられたのか、内部は白い工作物に透明オブジェと無彩色の物体ばかり。
そんなモノトーンの世界で鉢植えの緑が映えるバエる。

ここは学生が様々な工作機械を使ってものづくりを実践する工房。
そうか、設計コンセプトは「工作の森」やな?
言われてみると(言われてないけど)林立するランダム配置の極細柱群が森の木立に見えてきました。
森の中の工房で頑固な職人が鍛冶や陶芸に黙々と打ち込む。あら素敵。
しかし、時代は変わりました。
現代の名工は知られてなんぼ。
その点、この透け透け工房は中で何やってんのか自然とアピールできて見事に時代にマッチング。
そして本建物、シンプルに見えて実はかなり高度な匠の構造技術を駆使して作られています。
マニアック過ぎるのでその話は割愛しますが。
てな訳で、本日の結論。
「伝統工芸と先端技術の融合とアピール」という命題に建築を通して真摯に応えた力作かと存じます。
設計は今を時めく若手建築家の石上純也さん。
「50歳を過ぎて若手⁉」との声も聞こえますが、建築界では五十路はまだまだ「ひよっこ」扱い。
本建物が完成した時は若干30代半ばだったことが信じられません。比類なき才能。
透け透け建築の先輩・妹島和世さんの事務所出身なんですね。なるほど納得。
隠居した世捨て人の私が言うのも何ですが、同世代の石上さんのさらなるご活躍を祈念しております。
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基本情報
KAIT工房
設計:石上純也
竣工:2008年
場所:神奈川県厚木市
訪問:2026年1月
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