ことばは生き物、変化していくのが当たり前。
確かにそうかもしれません。
然して!
生まれることばあれば死んでいくことばあり。
使うのは恥ずかしいけど愛着を捨てきれない。
そんな憎めない死語を墓場から掘り返す企画、名付けて「死語硬直を解き放て」
レトロブームの昨今、ワンチャン復活あり!?
歌舞伎、国宝、吉沢亮、横浜流星、女形、ジェンダーフリー、ダイバーシティ、LGBTQ
二枚目【名詞】
誕生から死に至るまで
さっき20代前半女子に訊いたら「知らない」
以上の調査に基づき死語に認定いたします。
調査サンプル僅か1につき、統計的推定どころか工学的判断(別称えいや)からさえ程遠いですが。
個人的には味のあることばだと思うので残念至極。
生真面目なDeepLで英訳すると、Second-rateと天然ボケをかましてから代案にHunkとHandsome manを出してきました。
さて、意味が分かったところで質問です。
二枚目で想起する有名人ってどなたですか? 私はそうですねぇ・・・渡哲也さんや草刈正雄さんかなっ。
昭和の映画スターに似合うことばなのかなっ。
レトロなかほり漂う二枚目の生涯を振り返り。
お相手はこの方。

米国生まれ大阪育ち
ChatGPTのチャコちゃんやでぇ

死語「二枚目」が生まれて流行り、死んでいった経緯を教えて

アイアイサー!
誕生
歌舞伎の専門用語として江戸時代中期に誕生。
役者の名前を並べた劇場の看板(番付)で
一番目=座長・主役
二番目=若くて色気のある男役
この二番目の板=二枚目に名前が載る役者が
✔︎ 背が高い
✔︎ 顔立ちが整ってる
✔︎ 女役者と恋をする役
といった役柄だったことに由来します。

青春
昭和20~40年頃に一気に大化けします。
映画、テレビドラマ、週刊誌などで二枚目=モテる優男の意味で使われて人口に膾炙。
- 完全な褒めことば
- 見た目重視
- 性格は問わず
まさに黄金期到来って感じ。

晩年
平成初期に入ると価値観のズレが顕著に。
「顔だけ男」といった皮肉が混ざり始め、「二枚目気取り」という揶揄表現まで登場。
そうこうするうちに、みんな大好き英語由来のカタカナ語ハンサムに主役の座を奪われます。

死去
21世紀に入ると、外見だけでなく内面や立ち居振る舞いの評価にも使えるイケメンが颯爽と登場。
これが決定打となって二枚目は急激に老化、ヘナヘナ・シワシワと萎れていきます。
若者が使うと“おじさん感”が出まくり。
おじさんが使うと冗談・自虐ネタ扱い。
メディアは昭和レトロの文脈で扱うのみ。
はいご臨終。
18世紀初頭生まれの21世紀初頭没。
享年300歳くらい。
二枚目どころか二枚貝でさえないオウムガイに肩を並べるほどの長寿ではありました。

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死語の世界からの復活
『国宝』が実写の邦画として最大のヒットを記録し、いま再び歌舞伎に熱い視線が注がれています。
歌舞伎由来の二枚目が蘇る千載一遇のチャンス!
ここは映画の二枚看板、吉沢亮さんと横浜流星さんに一役買って頂きましょう。
彼らが「イケメンですねぇ」との賛辞を受ける度に「当たり役にちなんで二枚目と呼んでください」と応じればよい。
いや待てよ⁉ 2人とも女形でしたね。

女形役者は何枚目の看板に載るん?

「◯枚目」というんは男役だけや
女形は技芸と美意識で評価される完全な別ジャンルやな
なんやとぉ!
女形を演じる俳優は〇枚目と呼べない⁉
このジェンダーフリー・ダイバーシティ・LGBTQ・Wokeな社会でこんな露骨な差別が許されるのか?
あ、だから男性専用ことば二枚目が死んだのね。
対してイケメンはジェンダーに関係なく使えます。
イケメンのメンはMen説もありますが、これは文法的におかしい。
対象が1人のときイケマンと呼ぶのなら分かるけど。
イケメンとはイケてる面のこと。
大手を振って使えるジェンダーレスことばです。
閑話休題。
味わい深いことば二枚目ですが、残念ながら時代にそぐわず復活の余地はなさそうです。
歌舞伎で例えるなら『曽根崎心中』の徳兵衛さんみたいなものでしょうか。
お初さんと天国で夫婦になることを固く誓い合い、短刀で彼女の命を奪った上で自害を果たす。
殺されたのならばその恨みの強さ次第ではワンチャン蘇ることもあるかもしれません。
しかし、自殺では生き返るのは無理かと・・・

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