正式名称は小田原文化財団 江之浦測候所。
測候所って気象観測を行う施設?
文化財団って気象観測と何の関係が?
見学は事前の完全予約制?
疑惑は深まる一方ですが、案ずるより産むが易し。
いつもと毛色の違う建築徘徊に出発です。
新素材研究所、現代美術、反骨精神、伝統工法、大谷石、光学硝子、コールテン鋼
訪問記
早朝に出発して都心~湘南の悪夢の渋滞を耐え抜き、やっと正午前に到着。
ここは伊豆半島東の付け根、神奈川県小田原市。
ロングドライブをこなした自分へのご褒美に、近所の食堂で豪華お刺身定食を頂きます。

なんせ見学は午前、午後の1日2回限定。
酒でも飲んで待ちたいところですが、クルマなので自粛して予約した午後1時半の回を待ちます。
待ちに待った入場。
見えてきたのは透け透けのガラス筒。長さ100m。
全速力で走っても先端まで10秒ほどかかります。


その先端は夏至の日に太陽が昇る方角に向いているとのことで、なるほど測候所。
大好物の大谷石をはじめ多様な石が配されており、素材に対する並々ならぬこだわりが感じられます。


続いてのお目見えは錆び錆びの鉄筒。長さ70m。


表面の錆が被膜となって錆の内部進行を防ぐコールテン鋼®だそうで、素材に対する並々ならぬこだわりが感じられます。
毒をもって毒を制すってことですかね。
その先端は冬至の日に太陽が昇る方角に向いているとのことで、なるほど測候所。
錆び錆びの横には透け透けの曇天でも青空舞台。


レンズやプリズムに使われる光学硝子だそうで、素材に対する並々ならぬこだわりが感じられます。
下から見ると清水寺っぽくなくもない。
ここで踊るなら清水の舞台から飛び下りる覚悟でどうぞ。スカート履いてたらパンツ丸見え。
もしや光が乱反射して見えそうで見えない仕様?
2本の筒はどちらも異様に跳ね出しており、無意識のうちに視線が空に向かって伸びる仕様。


それぞれ夏至、冬至にはその先に朝日がご来光。
時の流れを取り込んだ現代美術らしい作品です。
先へ進むと現れたるは鋭い注射針の如きオブジェ。
先端の直径5mm、先端が交わるのは無限の彼方。
宇宙の果てに想いを馳せるロマン溢れる作品です。

この『チックン』(正式名称『数理模型0010』)、その後立て続けに兄弟を目撃することになります。


南仏・プロヴァンスと東京・大手町の『チックン』
その他サンフランシスコなどにもあるそうで、世界『チックン』巡りなんてのも楽しそう。
おっと、そろそろ紙幅が尽きそうです。
珠玉の芸術作品をごく一部だけ撮って出し。








素材に加えてその使い方も日本古来の伝統工法にこだわり、現代の高度に洗練された工業製品とは明らかに趣を異にします。
本施設は写真家・現代美術作家の杉本博司さんの構想を具現化したもの。
過度な合理主義・商業主義を声高に非難するのではなく、アートという無言の意思表明で応じる。
杉本さんの反骨精神が感じられて清々しい気持ちになります。かっこヨいです。
思い出すのは奇天烈映画『マルコヴィッチの穴』
7と1/2階のオフィスにある壁の穴を抜けると、そこは俳優ジョン・マルコヴィッチの頭の中。
長い筒の向こうが杉本さんの頭の中ならば、氏の想いが手に取るように分かって楽しいでしょうネ。
な~んて妄想してしまう素晴らしい施設でした。
惜しむらくは、我々ポンコツ夫婦の代名詞「いつでもどこでも雨かドン曇り」を地で行く悪天候。
ぜひ快晴の夏至または冬至に再訪したいものです。
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基本情報
小田原文化財団 江之浦測候所
設計:新素材研究所
竣工:2017年
場所:神奈川県小田原市
訪問:2019年3月
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