山口県萩市にやって来ました。
幕末から明治初期にかけて日本を背負って立つことになる数多の傑物を輩出した歴史ある街。
その市街地に浮遊感漂う白い箱もの建築を発見。
萩市民館。
ちょうど「萩焼まつり」が開催されていて中に入れそうなので、いざ突撃!
訪問記
とその前に、まずは外観から。
一言で表すなら白いフタの巨大弁当箱。
設計者は「両国のホワイトベース」の異名を持つ江戸東京博物館を手掛けた菊竹清訓さん。
言われてみれば(言われてないけど)飛べない宇宙戦艦に見えなくもない。
進取の気性に富む萩のこと、きっとプロトタイプ建造に快くGOを出したのでしょう。
フタを受ける弁当箱の本体は杉板本実仕上げのコンクリート打ち放し仕様。
鏡のようにツルツルでピカピカ輝く安藤建築とは真逆、かな~り荒ぶる魂を感じさせます。
威風堂々、無骨な入口を正面突破して内部に潜入。
これがホワイトベースならば侵入できるのはランバ・ラル隊くらいでしょうがね。
中は予想通りの無柱大空間。
外壁に沿ってグルっとロビーや研修室などが取り囲み、中央にはこれまた無骨なコンクリート壁で囲われた大小のホールが鎮座します。
フタならぬ屋根は天井仕上げがなくて鉄骨フレームむき出し。男気ムンムン。
小ホールには天井が張ってあるのでかろうじて少し落ち着いた雰囲気です。
狭い通路は寂れたシャッター商店街のよう。研修室にはレトロ感満載の家具とかわヨい空調の吹出口。
昭和の雰囲気を色濃く醸します。
現代建築3大材料の鉄・コンクリート・ガラスでできているにも関わらず、近年の洗練された都会的な雰囲気漂う建物とは似ても似つかぬ荒々しさ。
時代の変化をまざまざと感じさせられます。
一体いつできた建物なんやと調べてみると1968年、私より2年先輩でした。
道理で古臭い熟成された滋味が感じられる訳だ。
菊竹清訓さんの建築について少し語っておきます。
冒頭ご紹介の「両国のホワイトベース」と同じ頃に完成したもう1つの衝撃作、僅か14年で枯れた取り壊された「不忍池のクリスマスツリー」。
レゴでももう少し滑らかに作れるやろ?とツッコまずにはいられないカクカクしたフォルムで見る者を恐怖のズンドコに陥れた伝説の超高層ホテルです。
当時、ばかけんちく探偵団の記事『平和を乱す五重塔』に「我が意を得たり!」と膝を打ちました。
日本中がバブル経済に踊らされた狂乱の時代ゆえに実現した、負の歴史に燦然と名を刻む迷作。
他の菊竹作品もメガストラクチャーや吊り構造を取り入れたダイナミックなものが目白押し。
戦後の高度経済成長期、日本がブイブイ言わせていたときに第一線で活躍した菊竹さん、時代にうまくシンクロしましたな。
すっかり衰退途上国に落ちぶれてしまった現代日本で、ホワイトベースだのクリスマスツリーだの設計しようもんなら世間から袋叩きに遇いそう。
菊竹さんと星一徹さんが重なって見えます。
ド根性、理不尽、剛腕、狂気。
コンプライアンスだガバナンスだポリコレだといった美名の下、絶滅の危機に瀕する昭和の価値観。
しかし、今の日本に必要なのは菊竹さんや星さんの他人を巻き込む並外れたパワーかもしれません。
私は巻き込まれるのはゴメン被りますけどね。
【PR】
代謝建築論 か・かた・かたち 菊竹清訓 著(Amazonで購入)
怪奇骨董音楽箱 ジェネシス(Amazonで購入)



基本情報
萩市民館
設計:菊竹清訓
竣工:1968年
場所:山口県萩市
訪問:2025年4月
【PR】




コメント