謹んで哀悼の意を表するとともにご冥福をお祈りいたします。
建築徘徊はこれまで谷口さんの作品を2度取り上げています。
「建築徘徊12 鈴木大拙館|谷口吉生の設計による静謐な思索の空間」
「建築徘徊23 東京国立博物館 法隆寺宝物館|谷口吉生ルーバー建築」
今回は初期の傑作土門拳記念館を取り上げることで故人を偲びます。
訪問記
ところで土門拳(どもんけん)って誰や。
昭和の日本を代表する大写真家。
寺院仏像の写真が印象的ですが、リアリズムに徹した報道写真家でもあったそうです。
1909年の生まれですから、1913年生まれで20世紀を代表する戦場カメラマンのロバート・キャパと同世代。
親交はあったのかなぁ、などと妄想がはずみます。
さて本題へ。
土門拳は山形県酒田の生まれということで、この地に記念館が建設されたようです。
寡作の谷口吉生さんにとって初期の大傑作と言えるのではないでしょうか。
まずは遠くから建物正面の全景を眺めます。
谷口さんの建築といえば水盤に浮かぶ直線基調のシャープな外観が特徴。
早くもその個性が顕著に表れています。
こちらはその名も「拳湖」という人工湖だそうですが、とてもそうは思えない自然の美しさを湛えています。
建物に近づきます。
どこから見てもどう切り取っても潔いまでの直線・直線・直線。
奇をてらったところは一切なく、ひたすらシャープなエッジの効いた直方体です。
エントランスには土門さんと親交のあったグラフィックデザイナー亀倉雄策さんの手になる銘板。
外観同様のシャープな、それでいて温かみを感じる館内へ。
中庭で待ち構えるのはこれまた土門さんと親交のあった彫刻家イサム・ノグチさんの作品、その名も「土門さん」。
トドメは、これまた土門さんとの親交が深かった芸術家勅使河原蒼風さんのご子息勅使河原宏さんが手がけた庭園だぁ!
土門拳記念館に華を添えるこれらの芸術作品、谷口さんご自身が作家の方々にお会いして協力を依頼したそうです。
「建築家ってそこまでするのか!」と大いに驚いた次第。
その熱意というか執念というか、何か鬼気迫るものさえ感じます。
最後に美しい松の木と御影石?貼りのシャープな壁の対比を見納め。
完成してから40年を超える建物ですが、いまだ目立った汚れや劣化もなく依然キリッとした佇まいで湖畔に屹立しています。
その姿がダンディな谷口吉生さんのお姿に重なります。
どうか安らかにお眠りください。
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基本情報
土門拳記念館
設計:谷口吉生
竣工:1983年
場所:山形県酒田市
訪問:2019年10月
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