これまでご紹介してきた建築家の中で飛び抜けて若い方の登場です。
田根剛さんは40代半ば。
不惑を超えると世間一般には若手とは言い難いですが、こと建築家に限るとまだまだ「ひよっこ」です。
90代で現役バリバリなんて方もたくさんいらっしゃる/いらっしゃったので。
訪問記
2020年夏。
青森旅行の目的の1つ、オープンして2週間も経たないできたてホヤホヤの美術館を目指して弘前へ。
とはいえ、建物自体は明治から大正にかけて建てられた日本酒醸造所/シードル工場を改修したものなので、きっと年季と貫禄は十分に違いありません。
小降りの雨の中、かなり離れたコインパーキングにレンタカーを停めて徒歩で向かいます。
だって美術館には駐車場がないんですってば!
雨にそぼ濡れながらトボトボ歩いていると、鮮やかな赤レンガの建物が目に飛び込んできます。
向かって右側が美術館、左側がカフェとのことで、右側の入口に向かいます。
古いレンガと今回新調したであろうレンガの風合いの違いが分かりやすく現れています。
それにしても赤レンガの外装ってどうしてこうもノスタルジー(郷愁)を誘うのでしょう。
他にも有名どころでは東京駅丸の内駅舎、横浜赤レンガ倉庫、三菱1号館などがすぐに思い浮かびます。
どの建物も無条件で「素敵っ!💖」とメロメロしてしまいそうになります。
なんかズルい。
入館すると、地元弘前出身の現代美術家奈良美智さんの作品”A to Z Memorial Dog”がお出迎え。
赤レンガをバックに真っ白い巨犬が映えまくり。
優勝!
建物内部も赤レンガの色味と質感がそのまま生かされ、古い木の小屋組みと調和しています。
新調された床や階段の仕上げにも赤レンガを引き立てるべく落ち着いた色調の木材が使われています。
とはいえ、約100年前から使われ続けてきた赤レンガや木の小屋組みですから、よく見ると当然ながらかなり古びて痛んでいます。
これをどう捉えるかは難しいところですね。
古きよきものに価値を見出すならば、エイジング(経年変化)、アンティーク(古美術)、ヴィンテージ(年代もの)といった褒めことばが浮かびます。
現代建築を代表する材料コンクリート、鉄、ガラスが時間とともに味わい深く変化していき、愛着が沸いていくことはちょっと想像できません。
しかし忘れてはならないのは、東京駅丸の内駅舎は別格としても、弘前れんが倉庫美術館も横浜赤レンガ倉庫もその長い歴史の中できっと何度も不要論や解体論に晒されてきたであろうこと。
三菱1号館に至っては実際に解体されてしまいました。
(現存するのは復元建物です。)
時代の風潮や財政事情を無視することはできませんが、壊してしまうと取り返しがつかないことだけは確か。
建て替えるのではなく、新しい価値を伴って再生するリノベーションを選択した田根剛さんはじめ関係者のみなさまの決断と苦労に大いに敬意を表します。
あれれ? 柄にもなく真面目な論調になってしまったぞ。
頭を使い過ぎて血糖値が下がったので、最後に甘くておいしいアップルパイでエネルギー補充!
【PR】
弘前れんが倉庫美術館-記憶を継承する建築 田根剛+弘前れんが倉庫美術館 著(Amazonで購入)
基本情報
弘前れんが倉庫美術館
設計:田根剛
竣工:2020年
場所:青森県弘前市
訪問:2020年7月
【PR】
コメント